無駄っぽい9年間

1番難しい球技。

知らんけど

 

家でスポンジ・ボブ見てた。

そしたら母に外に連れ出された。

それが野球を始めたきっかけ

 

いや、正確にはソフトボール

 

こども会というやつ。

甘い、遊び、つまらない。

でも、なんとなく。

 

気づけば6年。

まともに土日は遊べなかった。

ふざけるな、誰だよ遊びって言ったの。

めちゃくちゃ厳しいじゃねぇか

 

「もちろん中学でも野球やるよね?」

 

5人くらいの大人に囲まれた

あー、逃げ場所がない。

 

「いや…たぶん…やりますね…」

 

みんなが笑顔に変わる

「お前はセンスあるから!」

いや、遊びたいよ。

 

確かに得たものは多かった。

自信、自信、自信…他には!?

 

うちのチームは2つのリーグに入っていた。

だから土日は試合しかない。

ソフトボールは50分試合と決まっていた。

 

だから1日に当然3試合はある。

 

みんな言ってたよ。

「辞めたい」 「遊びたい」 「辛い」

俺もそれに便乗。

 

「それな」

 

だけど暗い話題だけじゃない。

1年でチームは8回優勝 4回の準優勝など

そこそこ強豪チームって言われてた。

個人的には選抜に選ばれたとかなんとか…

 

それの3番セカンド

 

休みたくても休めない。

だから俺は小学校の時は5時半起き。

遠征の時はもっと早い時もあった

 

贅沢な悩みかもしれない

実際に試合に出れてない人もいるから…

だけどさ…だけど…

 

 

 

 

ずるずると中学の軟式野球部へ。

最初にビビったのは部員の多さ。

 

普通の中学校で全員合わせて70人!?

バカじゃねぇの?どこで練習するんだよ!

 

狭いグラウンドではたくさんの部活。

女子ソフトボール サッカー 陸上 などなど

 

案の定、俺たちは校舎の隅っこで筋トレ。

筋トレ終わったら筋トレ。

初めの3ヶ月間は永遠ループ

 

ボディビルダーになるのか?

 

3年が引退した。

正直誰も名前分からないよ。

俺たちは筋トレ部員だからな!

 

俺たち1年生は全員で27人。

1つ上の学年は28人

 

新チームの幕開けで気合が入る

俺たち筋トレ部員には居場所なし

 

ある日、1年から4人だけ選抜された。

先輩達と合同練習らしい。

 

「何で!?俺あいつらよりも下手くそか?」

 

思わず口から出そうになった。

初めて嫉妬心が生まれた。

 

俺たちは筋トレ部員に逆戻り。

 

うわ、自惚れてた。

どうやったら勝てる?

とりあえず授業中寝ないでおこう

 

腹筋しながら考えた

 

あっちは天国だよ

俺たちは筋トレ地獄

 

あれ?入部してからボール触ったっけ?

本当に筋トレ部じゃねぇか!!!

 

あーあ、辞めてやろうかな

 

 

 

 

 

 

冬になって、いじめ発覚。

 

は?何にも知らないけど。

え?俺たち1年は強制退部?嘘でしょ?

 

監督がいじめの相談を受けたらしい。

 

全員に配られた退部届け。

しっかりと"野球部"と書かれている。

 

あー、筋トレ部じゃないんだ

確かに冬になったから走り込んでるしね

 

1年は野球部から姿を消した

無駄に鍛えられた体が虚しく思った

 

 

次の日、めちゃくちゃ学校で寝た

もう野球部じゃないから怒られないし

 

「謝りに行くから放課後集合な」

 

俺たちは職員室の前で頭を下げた。

めちゃくちゃ怒られた。

 

野球部には戻れなかったけど

清掃部にはなれたらしいよ。

 

 

 

 

 

2年になった。

 

清掃部の活動は今日も順調。

あとは廊下を雑巾がけして終わり!

帰れるぞ!みんな喜べ!

 

「2年は着替えてグラウンドへ集合」

 

俺たちは走らされた。

あー、家帰って3DSしてぇなー。

 

「よし、グローブ持ってキャッチボール」

 

マジ!?野球するの!?

俺たちは清掃部を退部していいの?

マジかよ!めちゃくちゃ嬉しい!!

 

周りを見ると誰もグローブ忘れてない

お前らも期待してたんだな!

俺たちやっぱり野球部だ!!!

 

一球目は今でも忘れない。

自分でもびっくりするくらいの大暴投。

あーあ、野球楽しいな

 

 

 

また4人が選抜された。

その中に俺の名前はあった。

 

やった!きたきた!

 

だけど俺の代わりに落ちた奴もいる。

帰り道で遠慮して俺は一言も話せなかった

 

清掃員OUT 野球部IN

 

試合に連れていかれた。

2年は全員オフなのに俺たち4人だけ。

幸せだけど不幸ってこれだと思う

 

先輩とも仲良くなれた

沖縄のお土産とか特別に多くもらった

 

得しかしてないように見えるけど

俺は監督にめちゃくちゃ怒られた。

 

やっぱり厳しくなるよ。

目付けられて当たり前だと思うもん。

授業中も寝てたら起こされるよ。

バチンッ!って頭叩かれてね

 

 

 

 

 

3年が引退。

 

来たよ、俺たちの代だ。

後輩も入ってきたよ。

ちなみに人数は20人だけ。

 

新チームになって初めての大会

みんなは新人戦と言う。

 

俺は3番ショートで出させてもらった

 

 

結果だけ先に言うね。

俺のせいで1回戦負けだった

 

 

めちゃくちゃ緊張した。

ベンチ見たら背番号つけてない人もいるし

後輩達もみんな見てる。

 

舞い上がったよ

 

みんな俺には気を使ってくれた

ごめん、普通に俺は下手くそだ

 

次は絶対に勝とうよ

 

 

 

 

「お前のせいで負けたんだ!」

 

 

ポキッ 

 

あ、折れた

 

次の日、監督がみんなの前で怒鳴った。

自分でも分かってるよ、分かってるから。

 

 

「走ってこい!俺がいいって言うまで!」

 

そう言った気がする。

放心状態で全く耳に入ってこなかった

 

ごめんな、みんな。

 

1人で声を出して走ったよ。

あー、陸上部が笑ってる

 

 

恥ずかしさなんてなかった

惨めさと情けなさがそれを超えたから。

 

 

 

次の大会のメンバー表に俺の名前はあった

しかもレギュラーで失敗したショート。

 

やべえ、ラストチャンスだ。

 

ただのショートゴロ。

俺は取ってファーストに投げた。

ベンチに帰ってめちゃくちゃ褒められた。

 

やば、嬉しい、何これ、今日死ぬのか?

え?子供扱いされてない?

レベル低くね?何だこれ

 

 

 

 

昔から怒られるのは嫌いだった

逃げるために嘘をつく生活をしていた

 

「お前は嘘つくし逃げるから信用出来ない」

 

未だに親に言われる

まあ、仕方ないと開き直ってるよ

 

 

今回は逃げなかった。

正直試合休もうと思ったけど来た。

練習も死ぬほどした。

 

結果がこれ。

めちゃくちゃ嬉しい

 

 

 

 

時間は一瞬で過ぎた。

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?気づけば大会はあと3個?

いやいや!この前まで清掃部員だったんだけど

 

 

 

 

正直野球部は弱かった

清掃部とか言い訳なんて出来ないくらい

 

頑張って3回戦くらい?知らね

 

 

 

 

 

 

 

小さい地方大会で俺たちは初優勝

 

27人で泣きながら喜んだ

祝勝会は地元のお好み焼き屋でやった

騒ぎすぎて出入り禁止になった

 

 

あー、やってやったぜ

 

 

 

 

 

 

 

夏休みの途中で俺たちは引退した

短い短い野球生活だった

 

なぜ試合内容を書かないのか

 

疑問に思ってる人もいるかと思う

 

理由は簡単

全く覚えてないからです

 

 

でも一つだけ覚えてるんだよなぁ

俺のグローブの横を抜けていった打球を

 

 

 

 

学校に着くとラストミーティングが始まる

みんな泣いてるけど俺は真顔。

 

いやいや!負けてないって!

俺がおかしいのか?そんなことないだろ

 

ハサミで試合をした記憶をチョッキン

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺のせいで負けた、すまなかった」

 

 

 

 

 

 

監督が泣きながら1人ずつ握手。

 

 

 

 

俺がおかしいのか

 

 

 

「お前は最高だった」

 

 

俺と握手をした時に監督が言った言葉

 

 

 

 

 

 

 

家に帰った俺はグローブとバットを持って

近所の公園に向かう。

 

これが日常だから慣れたよ

 

 

なんとなく練習ある気がしたからさ

 

 

朝、目覚めたら6時だった

そして俺は野球のユニフォームに着替える

 

「は?あんた引退したやろ?」

 

母に言われて気づいた

あれ?マジか

Twitterを見るとみんな同じ時間に起きてる

 

「練習あるかと思って起きたら引退してた笑」

 

 

 

 

 

 

 

 

ピキッ

 

 

痛っ

あれ?肘動かない

 

 

 

 

 

いつも通り夕方に一人で練習していた

壁当てをしていたら肘に激痛が走った

 

 

 

「あー、肘やっちゃったね」

 

 

病院の先生に言われた。

ピッチャーしかならないと思ってた。

 

左利きになろう

心のどこかそう思った

なんちゃら五郎みたいにね

 

 

 

「受験勉強しなさい」

 

母に言われて夢砕ける。

 

 

 

 

そして俺は野球から離れた

 

野球できないから友達も減った

 

 

 

無事に志望校合格

やっと野球ができる!!!!!

 

 

あら?ここ野球部ないじゃん

俺って野球嫌いになったの?

 

 

 

 

俺の家にはグローブとバットが消えていた

今では親戚の子供が使ってるらしい

 

勝手にこうなったわけではない

 

だけど俺は怪我人

故障者リスト入りしてる人間

 

 

持ってても仕方ないよなぁ

 

 

びっくりしたよ

最初投げた時、10メートルも投げれなかった

野球始めた時でも20メートルは投げれてたよ

 

今の俺は体育が嫌いになった。

 

例えばハンドボール投げの時とか

「あいつ野球部だったんだって」

なんで広まってるんだよ

 

投げたらサッカー部よりも下で笑われる

 

 

くそ、野球やらせろよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?俺って野球好きだっけ?

好きで始めてないくせに求めてるな…

 

 

野球やってから得たものあったっけ?

 

 

親の顔が立ったくらいかな

結果的には親孝行してるもんな

 

 

失ったものは?

 

肘と自分に対する自信とやる気と友達かな

 

 

 

 

取り戻せる?

肘がポキポキなるけど

 

 

無理ですね

 

 

 

 

じゃあ、この9年間って何?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

知らねぇよ

代わりの夢が見つかったんだよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

"将来は野球選手になる!!!"

小学生の頃に書いた俺の夢

 

 

 

その夢を今の子供に植え付けるために

俺は今日も小学校に向かい野球を教える。